とはいっても、ドレスはそこまで派手じゃない。
なんのガラも付いていない、黄色い布に、大きな緑色のリボンを、腰にしばってある。
でも、それが、向日葵の焦げ茶色の髪と合わさり、まるで本当のひまわりみたいだった。
思わず、ぼーっと見惚れてしまった。
「日向君、もう来てるわよ」
淀野先生の言葉に、俺ははっと我に返る。
「え、来てたの?んもう、早く言ってよ。何にも喋らないから、まだ来てないのかと思ってた」
「あ、ああ。ごめん」
まさか、見惚れていたなんて、口が裂けても言えない。
「ほら、二人とも。もう、四時過ぎてるわよ。そろそろ行ったら?」
先生の言葉に、俺が時計を見上げると、針は四時十分のところをさしていた。
四時半には、集合と言われているので、そろそろ行かなくては。
「じゃあ、向日葵、行こうか」
「うん」
向日葵は、白杖を持つと、出口に向かって歩き出す。俺も一緒に歩き出して、教室を出て行った。
「ドレス、綺麗だよ。本物のひまわりみたい」
廊下を歩きながら、俺がそう言うと、向日葵は「えへへ」と照れたように笑う。
「お母さんに、ひまわりをイメージした衣装がいいって言ったの」
「なーんだ。計算してたのか」
「えー、なんで不服なのさ?可愛いでしょ?」
向日葵はそう言って、見たこともないであろうドレスを、くるっと一回転して、俺に見せた。
俺は、そんな姿に微笑ましくなって、「ああ」と答える。
