しかし、水田はそこで、何にも言わずに黙りこくってしまう。
「み、水田?いいぞ、そんな深刻に考えなくても…」
「僕が言えた義理じゃないけどさ」
水田がしゃべりだし、俺は自分の口をとっさに止めた。
やっぱり、水田の答えが聞きたかったから。
「『死』っていうのは、ある種の、エネルギー源だよね」
…エネルギー源?
でも、水田はそれだけ言うと、何も言わずに走りだしてしまった。
追いかけても良かったが、俺は追いかけなかった。
なんでも、答えを聞くのはよくない。少しは、自分で考えなくては。
畳部屋を出て、ぶらぶらと色んなものを見ながら、俺は考え続けた。
エネルギー源
どういう事だ?
結局、『死』というものは、悲観的なものだ。
特に、身近な人、大切な人に『死』が襲いかかってきた場合、それを少しでも前向きに受け取ろう、なんてできるはずがない。
向日葵が、生きてくれれば。
もしも、その願いが叶うんだったら、俺はきっと、どんなものでも差し出せると思う。
このピアノの能力も、命でさえも、渡せれるかもしれない。
そのくらい、『死』というものは、辛く、悲しく、人を絶望へと叩き落す。
それは、俺にだって、向日葵にだって、ほかの人にだって当てはまること。
考えれば、考えるほど、やはり悲観的な方にしか進まない。
もうよそう。もっと、希望を持つべきだ。
