もちろん、向日葵には生きてほしい。


いつか、向日葵と一緒に、おおきなピアノコンサートで、競い合い、一緒に弾きたい。
 

でも、死ぬな、なんて簡単に言えない。
 

俺は何にも知らないから。無駄に変な言葉を掛けて、向日葵を不快な気持ちにさせたくないから。
 

やがて、水田は話が終わったのか、男の人にお礼をする。
 

「水田!」
 

俺は、そのタイミングを見計らって、水田に声を掛けると、水田も気付いてくれた。
 

「進路の話、してたな」
 
「ああ、聞こえてたの?うん、そう。やっぱり、専門家に聞くっていいよね」
 

水田は、そう言ってはにかむように笑った。
 

「みんなすごいな。他の2人も、なんかスカウトされかけてたよ」
 
「そっか。よかった」
 

俺の言葉に、水田は、安堵のため息を共にそう言う。
 

沈黙が流れた。俺と水田は、ぼーっと他の部員たちを、見つめた。
 

「なあ、水田。『死』って、何だと思う?」
 
「え?なに、急に?」
 

俺の突然の言葉に、水田はぎょっとした。
 

当たり前だ。こんなこと急に聞いて、「うーん。そうだな」なんて、言えるわけがない。
 

「ご、ごめん。ちょっと気になっただけ」
 

慌てて撤回する。
 

前に、『努力』について、いい答えを返してくれたから、またいい答えが返ってくるんじゃないか、と期待してしまった。