吹奏楽の演奏は、俺が想像していたのよりも、はるかに良かった。
 

黒西が、ソロで演奏するところもあり、俺の前に座っていた大学職員の人が、黒西の方を指さして、「いいわね」と喋っていたので、もしかしたら本当に、スカウトが来るかもしれない。
 





そして、俺は今、伊藤の絵を見るために、美術室に向かっている。


一応、今日のために、美術室は貸し切りにして、観覧室にしてあるそうだが、なにせ部員が三人だ。

スカウトに来た職員の人たちも、少し、いや、かなりドン引きするのではないか、と不安になる。
 

美術室に着くと、ドアにはでかでかと、『美術部:絵画展』と書かれた、看板が貼られていた。
 

中に入ると、想像していたよりもたくさんの人が来ていて、中には、『芸術大学:職員』と、名札をつけている人もいる。
 

「お、空川。やっぱり来てくれたか!」
 

伊藤の声に、俺は「まあな」と返す。
 

「部員三人しかいないから、どうなるかと思ってたけど、案外繁盛してるんだな」
 
「まあな。俺の絵が、素晴らしいんだろ」
 

相変わらずの発言に、俺は「はいはい」と苦笑気味で流すと、あのひまわり畑の絵が、俺の目に留まった。


「お前、これ飾ったのか?」
 

俺が絵に近づくと、「ん?まあな」と言いながら、俺についてくる。