世の中にはどうにもならないことがあると、向日葵は言っていたが、本当にその通りなんだ。
 

でも、それじゃあ、あまりにも残酷すぎる。


どんなに考え方を変えても、絶対に可能性なんて見えない、『死』を目の前にして、人はどんな風にそれを受け止めなくちゃいけないのか…?
 

「わっ」
 

突然、音がずれた。と思ったら、向日葵と俺の手が、激突していた。
 

あ、そうだ。ここ、向日葵と弾く場所が重なるから、俺が避けなくちゃいけなかったんだ…。 
 

「ごめん、向日葵。ちょっと考え事してて、間違えた」
 

俺は慌てて謝るが、向日葵は顔を上げない。
 

よく見ると、微かに向日葵の肩が、上下に動いていた。
 

「向日葵?」
 

俺が、名前を呼び掛けても、向日葵は何も言わない。
 

俺は、モールでの出来事を思い出し、慌てて向日葵の肩を揺さぶった。
 

「向日葵?向日葵!大丈夫か?」
 

「…ごめん、だいじょ…うぶ…」
 

言葉もまともに言えない向日葵に、俺は慌てて向日葵のカバンを持った。
 

「大丈夫じゃないだろ、その感じ!明日はコンクールだし、今日はゆっくり帰ってもう休んだ方がいい」
 

俺はそう言って、向日葵にカバンを差し出すが、向日葵は顔を上げて首を横に振った。