心の中に奏でる、永遠の向日葵




八月に入り、猛暑のピークをなんとか超えた、下旬。

残り一週間で、学校も始まろうとしていた。
 

練習もだいぶ進み、なんとか一通り弾けるようにはなってきていた。
 

後の問題は、向日葵の気持ちだ。 
 

コンクール本番で、もしも向日葵がまた、逃げ出したりでもしたら。
 

でも、それはコンクール当日にならないと分からない。こればっかりは、練習のしようがないんだ。
 

そんな時、向日葵が遊びに行こうと持ち出してみた。
 

もちろん承諾。向日葵と、できる限り一緒に過ごしたい、そう思っていたから。
 

向日葵の家に着くと、玄関の前では、向日葵と向日葵のお母さんが立っていた。
 

「あ、日向君!」
 

向日葵のお母さんが、こっちに気づき、手を振ってくれた。
 

俺が、お辞儀をしながら駆け寄ると、向日葵自身もにっこりと笑う。
 

「ありがとう。来てくれて」
 
「もちろん」


俺が笑って返すと、向日葵のお母さんが口を開けた。
 

「この子が、日向君とショッピングモールに行きたいって言うもんだから、今日は私が連れてくわね」
 

向日葵のお母さんは、俺に車の鍵を見せた。
 

「あ、そうですか。なんか、すみません」
 
「あ、違う。違う。これは、私のため」
 

恐縮する俺に、向日葵が口を挟んだ。
 

「私、もう長い距離歩けないから、車で送ってもらうの」
 
「あ、そ、そういうこと…」
 

声が小さくなってしまった。