二人は俺に向かって、微笑む。なんだか、嬉しい気持ちでいっぱいになった。
 

思えば、前の学校ではまるで友達もいずに、一人で静かにピアノを弾いていたんだ。
 

『なんだか、近寄りがたいよね』
『そうそう。友達なんていらない、みたいな一匹狼っぽくて』
『ずっとピアノ弾いてるから、ミステリアスで雰囲気はいいんだけどねぇ』
 

確かにその通りだった。友達なんか作らずに、休み時間も放課後もずっと、ピアノを弾いていた。 
 
でも、それは別にピアノが好きだからじゃない。
 

本当は友達が欲しくてたまらなかったけど、できないから、その孤独感をピアノで埋めていただけだ。
 

いつの間にか、『孤高の天才ピアニスト』というあだ名がつけられ、褒められてるのか、けなされているのか、非常に複雑な気持ちになったのを、今でも覚えている。
 

だから、ここで普通に話せているのは、俺にとっては非常に幸せな事なのだ。