奇声と共に、一気に二つの竹刀が交じり合う。
どっちが叫んだのかは分からないが、これがもし水田の奇声だったら、少し寒気を感じてしまう。
「お!決着ついたか?」
伊藤の興奮気味な声とは対照的に、水田と相手は、すぐに元の態勢に戻る。
「よくわかんないけど、ダメだったみたいだな」
俺がそう言うと、伊藤が頭を掻きむしる。
「かあ!ほんっと、何が何だかさっぱり分かんねえ」
それは俺も同じだ。ピアノや絵画にに、複雑なルールがあるように、剣道にだってそれはあるのだ。
ところが、すぐにもう一度、お互いが激しく近づく。「パン!」と、竹刀で叩いた乾いた音がした。
すると、三人の審判が、持っていた二つの旗のうち、白い方が一斉に上げる。
「水田の名前の横に、白色がついているから、まず水田が一ポイントって事じゃない?」
黒西の言葉に、俺と伊藤は「イエーイ!」と喜んで、ハイタッチをする。
「じゃあ、次を取ったら、水田の勝ち?」
俺の問いかけに、黒西は力強く頷いた。
喜んでる暇もない。すぐに、試合は再開される。
ところが、さっきの先取で自信をつけたのか、すぐに水田がせめたと思ったら、水田の竹刀が相手の頭に当たる。
すると、再び白旗が上がった。
「勝負あり!」
その瞬間、一斉に拍手が起きる。
