「やっぱりトーナメント戦ね。水田は、一回戦目から戦うわよ」
「うっひょう。いきなりとか、マジで緊張してくるー」
伊藤が自分の腕をさする。
俺も同じ気持ちだったので、思わず伊藤と同じように、自分の腕をさすてしまった。
「あのね、出場するのは水田なのよ。なんであんたたちが緊張するわけ?」
黒西が、俺たち二人の肩を叩く。
正論過ぎる言葉に、何も言い返せなくなり、言葉に詰まった。
「…お、俺たちは、友人に感情移入が出来るんだよ!絆が深いんだ!な、空川?」
伊藤が言い返して俺にふるが、あまりにへんてこな言葉だったので、俺は同調するのは避けた。
黒西があきれ顔になって、何か言い返そうとしたらしいが、そこでアナウンスがかかり始める。
「これより、第六十三回、剣道予選大会を開催いたします」
アナウンスと共に、色んな学校からの代表選手が、乱れぬ列を作る。
一気に、会場が静まり返った。
「それでは、桜木高校代表、増子菊(ますこきく)さんから、選手宣誓をお願い致します」
へえ。選手宣誓は、桜木高校の人がやるのか。なんだか、誇らしくなってくる。
列から、一人女の人が出てきた。
初めて水田の練習を見に行った時に、声を掛けてくれた女の人だ。
列の後ろの方には、胴着を着て、引き締まった表情をしている水田もいた。
