先生が指をさしたのは、窓際の前から三番目の席だった。
 

俺は黙って指定された席に座る。
 

あれ?この席って…。
 

「お、俺の斜め後ろじゃん」
 

伊藤が席に戻りながら、そんなことを言う。
 

すると、たしかに伊藤は、俺の斜め後ろに座った。
 

「もう、運命みたいだな。俺の名前は伊藤和仁(いとうかずひと)、よろしく!」
 

伊藤がそう言って、俺に手を差し出すと、横から誰かが伊藤の手をバシッと叩いた。
 

「お前、いくらなんでも積極的すぎ。ナンパと変わんないよ」
 

優しそうな、されど冷静な声を伊藤にかけるその子は、俺の真後ろに座っている男の子だ。
 

爽やかな黒髪と、少したらーんとした優しそうな瞳。伊藤とは違って、第一印象はとにかく優しそう、という感じだった。
 

「えー。いいじゃん、いいじゃん。別に、減るもんじゃないしぃ」
 

「やめろ、その言い方!本当に空川の事ナンパしてるんじゃないかって、心配するわ!」
 

伊藤のおかしな言動に、男の子は歯切れよくつっこむと、俺を見てニコッと笑った。
 

「あ、僕の名前は、水田英雄(みずたひでお)。よろしく」