何が何だかわからず先生を見ると、先生も俺を驚いたように見つめている。
 

そこで、俺はあることに気づいた。
 

少し、視線を下に向ける。腕が、上がっていた。
 

俺はさっと手を、後ろに戻す。
 

ま、まさか…。
 

「あ、あの、先生、俺何やってましたか…?」
 

恐る恐る聞くと、先生は相変わらずポカンとしながら、口を小さく動かした。
 

「いや、何をしてたって…。エアーでピアノを弾いていた、のか?」
 

…やってしまった。
 

転校初日だというのに、完全に変人めいたことをやってしまった。
 

終わりだ…。俺の、ここでの学校生活は、既に終わりを迎えてしまった…。
 

「すげーな、お前!」
 

突然声が聞こえたと思って頭を上げると、一人の男の子が目の前に立っていた。


吸い込まれそうな大きな茶色い瞳に、ひょろっとしているようでガタイのいい体つき。