「行ってきます」
 

俺は、ドアに手をかけてそういうが、返事は返ってこない。
 

もう慣れたものだと思いながら、俺は家を出る。
 

外に出ると、弱々しく、されどほっとするような、朝日の光を全身に浴びた。
 

俺は、新品の制服に少しぎこちなさを感じながら、新しい通学路を歩き出す。
 



高校二年生になった俺は、これから新しい学校に転入することになっている。
 

もともと、この街には住んでいるのだが、学校だけ変えたのだ。


私立桜木(さくらぎ)高校。
 

それが、俺がこれから入る予定の高校。
 

私立というくらいなのだから、それなりに学費も高い。


しかし、その学校は学力というよりも、それぞれの才能を伸ばそうという教育方針を持っている。


そのため、推薦枠がたくさんあるのだ。大して頭がよくなくても入れるし、相当な才能を持っていれば、学費だって免除される。
 

そして、俺はその推薦枠で、転入したのだ。
 

俺の家は大してお金もないが、推薦でいい結果を出し、見事学費も免除された。
 

その推薦枠は…。