ざっと見て、三十人くらいの生徒たちが、俺を見つめていた。
コンクールでは何とも思わないのに、この視線は、今の俺を猛烈に苦しめている。
「空川、早くこっちにこい」
先生に促され、俺はできるだけ視線を感じないように下を向きながら、教室の中を歩いていく。
その間も、無言の痛い視線が、俺に突き刺さっていくのを感じた。
なんとか先生の横に立つと、俺は小さく頭を下げた。
「そ、空川日向です…。よろしく、お願いします…」
あまりにも小さい声だとは、自分でも自覚出来ているが、これが俺の精いっぱいの自己紹介なのだ。
俺は緊張をできるだけ態度に表さないように、お辞儀をしながら顔を隠す。
「…なんか、声小さくない?無愛想っていうか…」
「ってか、あれが、噂の…?」
ああ、小さな声なのに、常に耳を鍛えているせいか、すべてがくっきりと聞こえてしまう。
