気持ち悪くなってきた。まるで、不協和音を聞いてるみたいに。
たぶん、この音が嫌なんじゃない。黒西の楽しそうな姿に、忘れかけていた劣等感が、俺を襲っているのだ。
『どんなに辛くて、どんなに理不尽に思っても、好きだって気持ちの方が勝って、続けられるんだよね』
『絵を描いてる時が、すごい俺にとっての幸せだから』
俺だって…。俺だって、好きって気持ちがあれば、すべてが解決するのに。
感情だって持てるだろうし、心からピアノと向き合っていけるはず。
ダメだ。どんなに励ましの言葉をもらっても、やっぱりこの気持ちは克服できない。
いつまでも、いつまでも、背後霊みたいに俺から離れていこうとしないんだから。
いつのまにか演奏は終わっていた。
小島先生が、生徒たちに向かって何か言っているが、耳に入ってこない。なにも聞こえない。
そのまま、また皆は個人練習に入る。小島先生が、俺に近寄ってきた。
「どうだった?結構、よかっただろ?」
小島先生の、言葉に俺は黙って頷く。まさか、聞いていませんでしたなんて言えるわけがない。
ところが、すぐに異変に気が付くのが、先生のすごいところだ。「ん?」と言って、小島先生は俺を覗き込む。
「どうした?元気ないけど、調子悪いのか?」
