…とはいっても、水田も伊藤も好きっていう気持ちを持ってて、正直焦ってる自分がいることに変わりはない。
だいたい、あんな生き生きとしたセリフとか、態度を見せられて、どうとも思わない方がどうかしている。
「はあ…。ほんと、なんだかな…」
思わず声で呟きながら、俺は三階に続く階段を上がる。
すると、また徐々に聞こえてくる音。
ピアノはやっぱり聞くと、嫌悪感が湧く部分もあるが、やっぱり吹奏楽の音楽は、聴いていて純粋に楽しい。
俺は少し早足で、三階の廊下を進む。
にしても、防音の壁をすり抜けて音が聞こえるなんて、我ながらなかなかだよな。
ほんと、聴力だけは向日葵とおんなじレベルなのかもしれない。
そんなことを考えているうちに、音楽室にたどり着く。
中から聞こえてくる音楽は、さっきのようにしっかりと合わさっていない。というか、皆完全に個人で弾いてる音だ。多分、普通に練習しているんだろう。
そこで、俺ははっとした。
そうだ、吹奏楽部には全然知らない人たちだっていっぱいいるんだ。そんなところに、初対面の人と目が合うだけで緊張してしまう俺が、いけしゃあしゃあと入っていけるわけがない。
それどころか、黒西に「見に来た」なんて言ったら、変に誤解される可能性だってある。
水田の部活も、体育館っていう広い場所でやってるわけだから、そんな目立つわけじゃなかったし、伊藤なんて一人でやってたんだから論外だ。
