手前の方は、何かを思い出させるような夕暮れ色と、思わず目を細めてしまうくらいにほっこりする、茜色の太陽。奥に行くにつれて、色んな色を混ぜたであろう奥行きのある夜空が、キラキラと光る星を際立たせている。
本当に、しっかりと給料をもらって生活している画家並みのうまさだ。
しかし、俺はそれ以上に驚いたことがある。
そんな幻想的な情景と一緒に写っているのは、上を向いて笑っている女性だった。
長い黒髪に、白い肌。ちょこんと出ている鼻と、大人っぽい瞳。
俺の見間違いでなければ、その女性は黒西にそっくりだった。
でも、なんで黒西がここに描かれて…。
「ああ!」
突然叫び声が聞こえたと思いはっとしたら、振り向く暇もなく誰かに背中を叩かれた。
「お前、こんなところで何してるんだよ!」
ひりひりとする背中をさすりながら顔を上げると、そこにいたのは顔を赤く染めた伊藤だった。
「い、いや、ただお前の絵を見に来ただけ…」
「バカ!そういう時は、前もって言えよ。だいたい、なんでこの絵を描いてる時に…」
伊藤は、ぶつぶつ言いながらキャンパスを戸棚にしまう。
黒西の絵が描かれているときは、一体どういうことなのか分からなかったけど、この伊藤の明らかに動揺した態度を見て、俺は全てが腑に落ちた。
「…お前、黒西の事好きなの?」
