「ありがとう。やっと、日向君に近づけた気がする」
ビュンと風が吹いてきた。肌は少し寒さを感じたけど、向日葵の返答に俺は心が温かくなった。でも、なぜか声は出ない。
「そんなことがあったなんて。大変だったね」
「…うん」
やっと、それだけ言えた。あとは、頷くことしかできない。
「やっぱりショックだよね。『生きてる価値がない』なんて言われたら」
「…うん」
なんだろう。今まで、誰にもこんなこと言われたことなかった。
だから、嬉しいのか、新鮮なのか、何なのか分からないけど、頭がまともに動かない。
そこで、向日葵は喋るのを止めると、何かを考えてるのか目を閉じる。
何を考えてるんだろう。よく分からないけど、俺の事を考えてくれているんじゃないだろうか、と少し自分勝手なことを一瞬考えてしまった。
「日向君のお母さんにとっては、日向君は『生きてる価値』がない人間かもしれない。でも、でもさ…」
向日葵が俺の左腕を、ぎゅっと握った。骨ばった向日葵の細い手を、自分の腕で感じる。
「…私にとって、日向君は『生きる価値』のある人だからね」
ギュッ
より強い向日葵の握力が、俺の腕に伝わる。
向日葵にとって、俺は生きる価値のある人。
向日葵、君は純粋過ぎるよ。そんなに、真剣にならなくても、必死にすがるような態度を見せなくたって、俺は平気だよ。
