喉の寸前まで来てるのに、言葉にすることができない。もどかしさで、俺は頭をがっくりと落とす。
「日向君さ、お母さんの圧力でピアノが嫌いになったんでしょ?それで、ピアノに感情を入れられなくなったんでしょ?」
向日葵が俺の葛藤をよそに、質問してくる。
「え?い、いや、まあ、そういうことになるの…かな?」
やっぱり、母さんに対する恐ろしさのせいか、しっかり「はい」とは言えない。
「言ってたよね、日向君。お母さんに、生きてる価値がないって言われたって」
そう言われて、俺は向日葵の顔を見つめた。
でも、向日葵は前に顔を向けている。まるで、このひまわり達が見えてるんじゃないかと思える。
俺は、ふっと息を吐くと、口を開いた。
「向日葵、俺さ…」
全部話した。中学生の頃に起こった、あの事件。
母さんに怒られて、生きてる価値がないって言われて、そこから感情が持てなくなった事。
そして、今自分はピアノが好きなのかどうか、分からない事。
不思議と嫌な気分にはならなかった。たぶん、向日葵と一緒だから、嫌な気持ちよりも幸せな気持ちの方が勝ってるのかもしれない。
全部話し終えると、向日葵は優しく笑って、俺の方に顔を向けた。
子供っぽい向日葵の笑顔しか、これまで見てなかったから、少し大人っぽい笑い方に驚いてしまった。
