日向なんて、俺には合わないくらい明るい名前だが、親が付けたのだから仕方がない。
先生は満足そうに笑うと、「ついて来い」と言って、職員室の出口に向かう。
俺もそのあとについて行く。
廊下に出て周りを見渡すと、俺は思わずため息をしてしまった。
昔っぽいものが何一つなく、改めて高級学校なんだなと感じさせられる。
「空川は、音楽推薦でこの学校に入ったんだってな?」
上から突然、先生の声が降ってくる。
「は、はい。ピアノ推薦で…」
「そうか。じゃあ最近、噂になってるピアノがうまい子っていうのは、お前の事だろうな」
それについては、何て答えていいか分からず、苦笑いをする。
やっぱり、先生とも怖くて話せないし、普通に声が出ない。
「先生も、実は担当教科が音楽なんだ。だから、お前の事は前々から聞いていたよ」
