「……なに、人のことジロジロ見て」
「あ……、ご、ごめんっ」
「ふんっ。……まぁ、見られるのには慣れてるから、別にいいけど。っていうか、ひとり? 今日はお互いの友達を連れてくるって話じゃなかったの?」
そう言って訝しげに眉根を寄せたたっちゃんは、カラコンを入れているのか、瞳の色は神秘的な灰色だった。
「もしかして、ユウリくんのお友達も何か予定があって遅れてくるとか?」
コテン、と可愛らしく首を傾げたミオは何故か、俺ではなくたっちゃんの方を見て尋ねる。
するとたっちゃんは、「僕が知るわけないでしょー、こっちに聞いてよ。ほんと美織って意味わかんない」と答えて俺を指差した。
「……たっちゃんって、ほんとに一言多いよね」
「あら、ごめんねー。美織がグズだから、つい口うるさくなるんだよねー」
たっちゃんの言葉に、ミオが「なにそれ!」とハムスターのように頬を膨らませる。
それ、可愛い……じゃなくて、その何気ないやり取りに、胸の奥がチクリと痛んだ。
こんなふうに、軽口を叩くミオを見るのは初めてだ。
俺とふたりでいるときのミオは基本的に緊張した様子で、何気ない質問にも言葉を選んでいるように思う。
もちろん、それは仕方のないことだともわかっているけれど……。
俺達が初めて話したのは、つい二週間前。
ミオとたっちゃんの付き合いの長さがどれくらいのものかわからないけれど、当然、俺よりも随分長い。
だからミオが気を許しているのは、俺ではなくたっちゃんで、間違いないんだ。



