「……ってわけで、昨日の夜に頼まれてたこと、俺は絶対無理だから」
こちらを見ないままでそう言ったナルは、ふぅ、と息を吐くと次の授業で使う教科書を机の上に置いた。
昨日の夜に頼まれていたこととは、俺がナルにメッセージで誘った要件のことだ。
【明日の放課後、俺と一緒に、ミオとミオの親友と四人で遊びに行かない?】
ナルからは即座に【無理】との返事がきたけど、【こんなこと頼めるの、ナルだけなんだよ】と、俺が食い下がっていた。
「ミオって子と一緒に、たっちゃんとかいう男友達も来るんだろ? ……もし会ったら、俺は今みたいに、そのふたりの関係を壊すようなことを言うかもしれない。そうなったらユウリの恋を邪魔することになるから、やっぱり俺は行けない」
優しい親友に、それ以上の無理強いなんてできるはずがなかった。
何より、ナルの【男女間の友情は成立しない】という意見を、俺は否定することができなかったから……。
それは俺自身も、ミオのそばにいるたっちゃんの存在に、少なからず不安を抱いているからだ。
ナルの言うとおり、もしもたっちゃんが俺と同じように、ミオのことを好きだったら?
「力にはなれないけど、まぁ、がんばれ」
ナルの言葉と同時に、昼休み終了を告げるチャイムが響き渡った。
結局俺はミオからのメッセージに返信することができないまま、その日は放課後を迎えることになってしまった。



