「……だけどきっと、世の中には異性の親友がいるって人も、たくさんいるんじゃないか?」
努めて冷静に答えたものの、ナルは更に表情を険しくしてしまう。
「じゃあお前は、そのたっちゃんとかいう奴が、これからもミオって子のそばにいても全然平気なんだな?」
「そ、それは……」
「たっちゃんとミオって子がふたりきりで出掛けたり、自分以上に連絡を取り合っていたとしても、疑いを持たずにいられるか?」
強い問いかけに、また言葉に詰まってしまった。
ナルの言うとおりだ。
俺はこれからも、たっちゃんがミオのそばにいても、まるで気にせずにいられるのか?
ミオの親友として、そのたっちゃんって男がそばにいることに……俺は、不安を抱かずにいられるのだろうか。
「そんなの、無理に決まってるだろ」
「……っ」
断言されて、思わずギュッと手の中の携帯電話を握りしめた。
「いつ、どちらかが、些細なキッカケで相手を異性として意識するかもしれない。……っていうか、すでにそのたっちゃんって奴は意識してるかもしれないし。何より、どちらかに恋人ができたとして、その恋人がふたりの関係を許すわけがない。……好きな人の近くに、自分以外の異性がいるって普通に考えて嫌だろ。だからやっぱり、男女間の友情なんて成立するわけないんだよ」
眉間にシワを寄せて言い切ったナルは、不愉快そうに開いていた漫画を閉じた。
そうしてそれを机の中に押し込むと、頬杖をついて窓の外を見る。
その目はどこか遠くを見ていて──瞳にはゆらゆらと、悲しみとも切なさともとれる色が滲んでいた。



