「ほんと、ユウリって救えないほどお人好しなバカだな」
「な……っ」
「男女間の友情なんて成立しないに決まってるだろ」
キッパリと言い切ったナルは、苦々しげに息を吐いてから言葉を続ける。
「そのミオって子にその気はなくても、男の方がその子のことを好きだって可能性もある」
ドクン、と心臓が不穏に高鳴ったのは、そう言ったナル自身が酷く傷ついた表情をしていたからなのかもしれない。
同時に、心には黒い雨雲みたいに大きな不安が押し寄せて、鼓動はバクバクと早鐘を打つように高鳴りだした。
『たっちゃんにはいつも、美織は鈍くさい、ノロマだーってバカにされてばかりだし』
二週間前、テレビ電話をしたときにも、ミオの口から"たっちゃん"の名前が出た。
お互いの家族の話になったときに、何気なくミオが言ったことだ。
あのとき俺は……"たっちゃん"の名前に一瞬動揺して、言葉に詰まってしまった。
慌てて平静を装ったけれど、ミオはとても不思議そうな表情をしていたし、変に思われたかもしれない。



