『……おやすみ、ミオ』
画面越しに挨拶をした俺は、名残を惜しみながら通話終了のボタンを押した。
だって通話を繋いだままじゃ、とても眠れそうになくて──。
たとえ画面越しでも、好きな子が隣で寝ていてグッスリ眠れる男なんて、いないと思う。
「……しょうがないだろ、勝手に顔がニヤけるんだから」
視線を斜め下に落として拗ねたように呟くと、ナルが「ふぅ」と短い息を吐いた。
今日の放課後は、二週間ぶりにミオと会う約束をしている。
もちろん、レッスンの続きをするためなのだけれど、ミオと久しぶりに会えると思うと、浮かれずにはいられなかった。
ここ最近はテストや委員会の用事が重なって、レッスンの続きができずにいたから……。
もしかしたら、ミオはもうレッスンの続きになんて興味を失くしているんじゃないかと、そんなことも考えていたから、会えることが嬉しくてたまらない。
【午後は体育の授業があるよ。ユウリくんは、なんの授業?】
手の中の携帯電話に届いたメッセージを見て、つい二週間前のことを思い出す。
内容は大したことのない世間話だけど、最近までお互いに名前も知らない関係だったことを考えると、随分な進歩じゃないか?



