「そういう美織は、朝から何、辛気臭い顔してるわけ」
世間ではジェンダーレス男子と呼ばれる彼──本名、曽根隆(そね たかし)こと、たっちゃんは、毒と一緒に可憐な溜め息を吐いた。
「美織は、ただでさえ童顔なんだから、辛気臭い顔してたら小学生が拗ねたみたいな顔になるのに」
「ウルサイな……」
たっちゃんだって、可愛らしい顔立ちに反して口から出るのは毒ばかりのくせに。
小学生、だなんて私よりも数倍可愛らしい男の子に言われたらダメージは大きい。
心の中で反論しながら机の上に項垂れると、たっちゃんに改めて「何があったの?」と尋ねられた。
……何があったって、それはもう。
朝からとんでもない失態をしでかした──なんて言ったら、絶対笑われるに決まってる。



