『ミオ?』
「う……ううんっ、なんでもないっ。な、なんだか、部屋が暑くって!」
『そうなんだ?』
手でパタパタと自分の顔を仰ぎながら、緩んだ口元を必死に隠した。
──嬉しい、なんて。なんだか変だ。
お世辞だとわかっていても、ユウリくんに可愛いと言われて照れてしまう。
何より、ユウリくんがお姉ちゃん目当てで私に近づいてきたわけではないと知って、心から安心してしまったんだ。
『ところでさ、ミオは、もうテスト勉強とかしてる?』
「へ? あ……う、ううん、まだ」
『そっか。そしたら、今から少し、一緒にやる?』
そう言うユウリくんは、ガサゴソと何かを取り出して、机に置いた。
ノートに、教科書、それからペンケース。
手に持たれていた携帯電話もどこかに置かれて、しばらく動いていた画面が固定された。
『今、机のスタンドに携帯置いたとこ』
「あ……っ、じゃあ、私も……」
『うん。そしたらこれから一緒に、勉強しよ。……ほら、学校違うし、なかなか一緒に勉強できる機会もないから、こういうのもいいかなと思って』
照れくさそうに笑ったユウリくんの言葉に、胸が高鳴る。
画面越しに繋がっているだけなのに、こうするとまるでユウリくんが正面に座っているみたいだった。
離れているはずなのに、ユウリくんを近くに感じる。
……ああ、そっか。
これが恋人同士なら、"幸せ"って思うのかな。
そう思うと不思議と胸が温かくなって、自然と顔が綻んだ。
それからふたりで机に向かって、宿題をした。
時々チラリと顔を上げるとユウリくんと目があって、そのたびに頬が熱くなってしまう。



