『ミオは?』
「え?」
『兄弟とかいる? あ……でも、ミオはしっかりしてるイメージだから、妹とか弟とかいそう』
ユウリくんのその質問に、私は一瞬返事に迷ってしまった。
脳裏をよぎるのは放課後の教室で、たっちゃんに言われた言葉だ。
『ユウリだって……アイツみたいに、美織のお姉ちゃんが目的で、近づいてきてるかもしれないだろ』
ユウリくんも、私のお姉ちゃん目当てで……。
でも、今のユウリくんの口ぶりだと、お姉ちゃんのことを知らないふうにも聞こえてしまう。
『ミオ? どうした?』
「え……あ、ご、ごめんなさい。え、と……私は、お姉ちゃんが一人いるよ」
『へぇ、そうなんだ。意外。今言ったみたいに、ほら、ミオって昨日も絆創膏を持ち歩いてたり……しっかりしてるイメージだから、年下の兄弟がいるかと思った』
そう言うユウリくんは嘘をついているようには思えなくて、やっぱり、私のお姉ちゃんのことは知らないふうだった。
「しっかりしてるなんて……、そんなふうに言ってくれるのは、ユウリくんだけだよ。たっちゃんにはいつも、美織は鈍くさい、ノロマだーってバカにされてばかりだし」
『……そうなんだ』
ぽつりと言ったユウリくんは、一瞬、曖昧な笑みを浮かべた。
何かを言いたそうな様子に、思わず首を傾げてしまう。



