「おーい、平気か?」
声を掛けると小学生たちが振り返った。
「え……あっ!」
「す、すみません。みんなで木登りしてたんだけど、アイツだけ降りられなくなっちゃって……」
「うん、そんな感じだな。とりあえず、ハイ。手を伸ばせる? 俺の首に、腕を回していいから」
こういうとき、180センチの身長がそれなりに役に立つなと思う。
小学生が降りられないと泣いている木は、ほんの目と鼻の先で、男の子が腕を伸ばしてくれればすぐに抱きかかえることができた。
グシャグシャな顔で泣く男の子は、俺の言葉に素直に頷き、手を伸ばした。
本当に怖くてたまらなかったんだろう。
登るときは案外平気でも、高さのあるところから下を見ると足が竦むのは、木登りのあるあるだ。
「ううーーっ。こ、怖かったよぉ……」
「うん、よく頑張ったな。でも、今度からは気をつけろよ。足を滑らせて落ちることだってあるんだし、あんまり無茶しないように」
泣いている男の子を宥めながら、地面に降ろした。
そうして、助けた男の子と、下から声をかけていた二人を並べて注意をすれば、三人は申し訳なさそうに「すみませんでした」と言って俯いた。



