「ユ、ユウリくんは、どうしてそんなに私のこと──」
「うん?」
「う、ううん。なんていうか、普段、たっちゃんにはからかわれてばっかりいるから、そんなふうに褒めてもらうのって慣れなくって……」
そう言ったミオは、またスカートの裾をキュッと握りしめた。
不意に吹いた風が足元の落ち葉を踊らせて、空の向こうに攫ってしまう。
また、胸の奥がざわめいた。
「ミオ。そのたっちゃんは、ミオにとって──」
ミオにとって、恋愛対象ではないの?
そう、尋ねようとしたとき、少し離れた場所から警笛のような子供の悲鳴が聞こえて俺たちは同時に動きを止めた。
「わーーっ、誰かぁ〜〜っ」
弾かれたように顔を上げ、声のした方へと目をやれば、小学校低学年くらいの男の子が二人、木の下に集まっているのが見えた。
「あ……っ!」
ミオが、何かを見つけて声を上げる。
男の子たちが見上げている木の上を見ると、彼らと同じくらいの男の子が一人、二股に別れた木の幹にまたがっているのが見えた。



