「……俺、さ。産まれる前は女の子だと思われてたらしいんだ」
「え?」
足元でサワサワと、落ち葉の擦れる音がした。
俺の言葉に、驚いたように目を丸くしたミオは、話の続きを待っていた。
「母さんが妊娠中、医者に、お腹の中にいるのは女の子だって言われてたらしくて。だけど、いざ産まれてきたら男で、本当に驚いたって」
ぽつり、ぽつりと話しだしたのは、以前、両親から聞かされた話だった。
「それで、名前をどうしようかってなったらしいんだけど、母さんが、どうしても"ユウリ"って名前にしたいって言って、そのままユウリになったんだって」
言いながら小さく笑うと、ミオはキョトンとしながら俺を見ていた。
子供の頃は、名前が女の子みたいだと言われたこともあった。
実際、女の子に間違われたのも一度や二度ではないらしい。
「昔は、名前のせいで女みたいだってからかわれたりして、嫌だなーとか思うこともあったんだけど……。でも、親が悩んで決めた名前だと思うと今は結構気に入ってて」
「そうなんだ……」
「うん。俺の名前の結璃って、"人との結びつきを宝物のように大切にしてほしい"って意味が込められてるらしいんだ。だから、そう考えたら悪くない名前だなーって」
高校生になった今ではスッカリ周りにも馴染んで、女みたいな名前だとかなんだとか、そんなくだらないことを言う奴もいなくなった。
「だからさ、昨日ミオに、"ユウリって、俺に似合った綺麗な名前だ"って言われて、すごく嬉しかった。昨日は照れくさくて言えなかったけど、ありがとう。ミオにユウリって呼んでもらって、もっと自分の名前を好きになれたような気がするんだ」
思わずハニかむと、胸の奥がくすぐったくなった。
ミオに名前を呼ばれるだけで、やっぱり自分は、彼女のことが好きなんだと思うんだ。



