「あの……?」 「ちちちちちち、違います! 人違いです、全然違います……! ノーセンキューです!!」 「え……でも今、確かに──」 「勘違いですから速やかに失礼します、ごめんなさい……!」 結果、それだけを言うのが精一杯だった。 真っ赤になった顔を隠す余裕もなく私はその場から走り去ると、改札を無我夢中で通り抜けた。 ……ああもう、朝からホントにツイてない。 まさか、"アレ"を誰かに拾われるだなんて思ってもみなかった。