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「──あっちのベンチにしようか」
駐輪場を通り抜けてすぐの歩道橋を渡れば、目的の公園までは歩いて五分もかからなかった。
その間、人ひとり分の微妙な距離を開けて歩いた俺たちは、お互いのことではなくて身の周りの話ばかりをしていた。
今日は寒かったね、だとか、今度駅の向こうにクレープ屋ができるね、とか。
一番電車が混んでる時間帯は何時だとか、そんな話ばかりだ。
「寒くない?」
「だ、大丈夫。ありがとう」
その時間はあっという間だったような気もするし、随分長い時間だったような気もする。
そうして公園に辿りついた俺たちは、大きな木の横に置かれたベンチに並んで腰掛けた。
「……え、と」
「……あれだよね。お互いのこと、話そうか」
今日の課題は『お互いのことを、よく知ろう』だ。
それにはまず、お互いのことをお互いに話すしかないだろう。



