俺の「好き」は、キミ限定。

 


 ✽ ✽ ✽


「──あっちのベンチにしようか」


駐輪場を通り抜けてすぐの歩道橋を渡れば、目的の公園までは歩いて五分もかからなかった。

その間、人ひとり分の微妙な距離を開けて歩いた俺たちは、お互いのことではなくて身の周りの話ばかりをしていた。

今日は寒かったね、だとか、今度駅の向こうにクレープ屋ができるね、とか。

一番電車が混んでる時間帯は何時だとか、そんな話ばかりだ。


「寒くない?」

「だ、大丈夫。ありがとう」


その時間はあっという間だったような気もするし、随分長い時間だったような気もする。

そうして公園に辿りついた俺たちは、大きな木の横に置かれたベンチに並んで腰掛けた。


「……え、と」

「……あれだよね。お互いのこと、話そうか」


今日の課題は『お互いのことを、よく知ろう』だ。

それにはまず、お互いのことをお互いに話すしかないだろう。