「……うん、そうだね。じゃあ、そのお互いのことをよく知ろうってやつ、やってみよう」
強張っていた肩の力を抜いて笑うと、ミオの表情も和らいだ。
俺が、彼女を不安にさせたらダメだ。
ミオには笑っていてほしい。……ううん、俺がミオを笑顔にしたい。
「じゃあ、今からここで──ひゃ……っ!?」
そのとき、足早に駆けてきたサラリーマンの身体がミオにぶつかった。
はずみでよろめいた身体は危うく地面に倒れ込みそうになって、反射的に手を伸ばした俺は、倒れそうになったミオの身体を抱きとめた。
「あ……っぶな……っ!」
間一髪だ。
次の瞬間、至近距離で目と目が合って、必然的に見つめ合う形になる。
「……っ、ご、ごめんねっ」
胸にミオの頬が触れて、心臓がドクリと大袈裟に高鳴った。
また顔を真っ赤に染めたミオが、慌てて俺の身体から離れる。
……うわ、今、俺。
つられて自分まで顔が熱くなるのがわかって、慌てて手の甲で口元を隠して、顔を背けた。
なんだよ、これ……。こんな気持ちになるのは初めてで、真っすぐにミオの顔が見られない。
「け、怪我しなくて良かった。……とりあえず、ここだとまたぶつかったりしたら危ないし、駅の裏にある公園に行こうか? あそこなら、そこそこ広くてベンチもあって、ゆっくり話せそうだしさ」
視線を逸したままで提案すると、ミオは小さな声で「うん」と答えて頷いた。
心臓は、今にも爆発しそうなほど高鳴ったままだ。
まさか、こんなハプニングが起きるとは思わなかったから……。
一足先に歩き出した俺は、またミオが誰かとぶつからないように、彼女を背にして守りながら駅の構内を歩いた。
歩幅の狭い彼女に合わせることすら幸せで、なんだか胸が苦しくなった。



