「うかうかしてると、他の誰かに取られるぞ。そのときにまた、泣き言聞かされるのは嫌だから、ちゃんと気持ちは伝えろよ」
言い終えて、フイッと目を逸らしたナルは、先ほど勢いでミオを悪く言ったことに、罪悪感を覚えていたのだろう。
大の女嫌いなくせに。
なんだかんだと応援してくれるナルは心の優しい奴で、やっぱり自慢の親友だ。
「ありがとう。肝に銘じておく」
笑って応えると、ナルはまた「フン」と鼻を鳴らして漫画のページをめくった。
まずは今日の放課後、どうするかを考えよう。
ミオに会ってちゃんと話して、できる限りの気持ちを伝えたい。
そう思ったらまた緊張が走ったけれど、同時に彼女に会えることを嬉しくも思った。
✽ ✽ ✽
「ユウリくん……っ、お待たせしました……っ!」
放課後、待ち合わせの場所である駅前で待っていると、予定の時間よりも十分遅れでミオがやってきた。
肩で息をするミオは、学校からここまで走ってきてくれたんだろう。
今日はふわふわの髪を耳の下で二つに結いていて、首元にはほんのりと汗をかいていた。
「か、帰る前に課題のことで先生に捕まって……っ。それで、いつもより学校出るのが遅れちゃって……」
言いながら胸に手を当てて呼吸を整えるミオは、申し訳なさそうに俺を見上げた。
「……っ」
その、上目遣いがめちゃくちゃ可愛い……って言ったら、ミオはどんな顔をするだろう。
そもそも、好きな子が待ち合わせに少し遅れたくらいじゃ、一ミリの苛立ちさえ湧いてこない。



