「なんだよそれ、バカじゃね?」


男子校の朝の教室は、賑やかというよりうるさい。

話の内容はと言えば、やり込んでいるアプリゲームのイベントがどうだったとか、バイト先に可愛い女の子が入ってきただとか……。

基本的に学生の本分である勉強に関する話題は、全くと言っていいほど出てこない。

だけど、このむさ苦しくもバカバカしい空間が、どうしようもなく居心地が良かったりするから不思議だ。


「恋愛指南書の内容を、二人で実践していくって……どんな安いドラマだよ。くだらない」

「く、くだらないとか言うなよ……! 俺だって俺なりに考えて、なんとか、あとに繋げようと必死だったんだから……」

「ハァ……」


だんだんと語尾をすぼめた返事に、あからさまな溜め息という返事をくれたのは親友の"ナル"こと、佐鳴十夜(さなる とうや)だ。

ナルは頬杖をつきながら、前の席に座る俺の顔をまじまじと眺めたあと、また大袈裟な溜め息をついてみせる。