──「あの……これ、落ちましたよ」
だからあの日、彼女の鞄から落ちた一冊の本を拾って、今度は俺が追いかけた。
人違いだと言われて受け取ってはもらえなかったけれど……。
彼女が落とした本に間違いないと言い切れるほど、あの日の俺は、朝日を浴びる彼女に見惚れていた。
「どうしよう……」
結局学校まで持ち帰り、手に残ってしまった本を眺めた。
そしてふと、何気なく裏返してみたら……帯裏に書いてあった"ある言葉"が目に入って、息を呑む。
【素敵な恋は、あなたの世界を色鮮やかに変えるでしょう】
その言葉に後押しされて、俺はその日の放課後、彼女に会いに駅へと向かった。
彼女に会ったら、なんと声を掛ければいい?
どうやって呼び止めよう。



