「え……っ、あっ、なんで……っ」
「……? え、と。これ、あなたのです、よね……?」
そう言われて彼女の手を見ると、俺の生徒手帳が握られていた。
慌てて胸ポケットに触れてみると、確かにない。
足元に置いた鞄を持って席から立つときに、ポケットから滑り落ちたのだろう。
「え、あ……そうです、俺のです……!」
「よかったぁ……。間違えたかと思った……」
心底ホッとしたように胸に手を当て息を吐き、満面の笑みを見せた彼女に見惚れてしまう。
まさか、こんなふうにいきなり彼女と話すことになるなんて……。
もしかして、これはチャンス? いや、今こそ彼女に名前だけでも聞くべきだろ。



