「置いていくわけないだろ! ミオも、一緒に行こう!」

「で、でも──」

「ってことで、ナル。また来週、学校で」

「え──!?」


返事を聞く間もなく、ユウリくんは私の手を引いて走り出した。

反対に離された手の先を見るとトウヤくんが微笑んでいて、私達とは別の道へと駆けていく。


「……【自分の気持ちを相手に伝えよう】」

「え?」

「さっき、たっちゃんに見せてもらった恋愛指南書に書いてあったレッスン内容。例文は、なんだったかな。あ……生徒手帳に【好きだよ】と書いて告白☆とかなんとかだった気がするけど、その先は忘れた!」


そう言うと、ユウリくんは太陽みたいに眩しい笑顔を浮かべた。

風を切り、二人で駆け抜けていく景色はいつもよりもキラキラと輝いて見える。

ユウリくんが引っ張ってくれているおかげか、不思議といつもよりも身体が軽い。

──自分の気持ちを、相手に伝える。

もう一度その言葉を心の中で呟いて、繋がれた手をギュッと強く握り返した。

いつの間にか雨は上がって、雲間からは透明な光が差している。

背後の学校が見えなくなるまで走り続けた私達は、ようやく足を止めた先で顔を見合わせると、息を吐くように笑い合った。