「……はぁ? くだらないこと、言ってんじゃねぇよ」
吐き出された言葉は、毒々しくて、思わずゴクリと喉が鳴る。
これまでの飄々としたたっちゃんはどこにもいなくて、直後伸びてきた手に、胸倉を掴まれた。
「前にも言ったとおり、僕は美織のことを友達として大切に思ってる。だから僕はいつだって美織の味方だし、美織のことを信じてる。美織が間違ったことをすれば怒るし、友達を泣かせる奴は誰であろうと許さない」
「だから、それは──!」
「男だから、女だからとか、そういうチープな"常識"って名前のモノサシ持ち出さないでよ!」
「……っ、」
「美織は男だから女だからとか関係なく、僕の大切な友達なんだよ! 友達を大切に思う気持ちは、男も女も関係ないだろ!!」
──一縷の迷いもない声は、空高い雲さえ貫きそうな強さを持っていた。
結局……バカなのは、俺だった。
俺は、ナルのこともミオのことも上手くいかない気持ちを今……たっちゃんに、ぶつけたんだ。
たっちゃんの怒りは最もで、いつまでもグズグズ悩んでいる俺が一番、どうしようもない。
ああ……そう考えると、ナルも過去、ミオを傷つけたときにはこんな気持ちだったんじゃないか?
やり切れない、どこにも行き場のない気持ちを、吐き出してぶつけてしまった。
そして今、ナルは……それを、誰よりも後悔してるはずだ。
だって俺が知っている親友は、そういう優しい奴だから。



