……もしかしたら、ナルとはこれっきりになってしまうのかな。
そんな弱気なことを考えたら、胸には憂鬱の塊が落ちてきた。
長い廊下を歩いて階段を降り、昇降口に向かう。
下駄箱を見るとやっぱりナルの靴はなくなっていて、一人で学校を出る姿を想像したら胸が痛んだ。
上履きを下駄箱に入れ、靴を落として足を入れ、歩き出す。
すると、校門の前で見覚えのある姿を見つけて──俺は思わずその場で、足を止めた。
「たっちゃん……?」
ネイビーに染められた髪は、ハッキリとした顔立ちとよく合っている。
男子校ということにも臆することなく堂々と立つ姿は男前なのに、爪にはど派手なネイルが施されていた。
以前、ミオと三人でカフェに行った以来、会っていなかったけれど、今、そこにいるのは間違いなくミオの親友である、たっちゃんだった。
どうして、たっちゃんがこんなところに──。
「……ようやく来たね」
俺を待っていたのか、そう呟いたたっちゃんは、俺を見つけるなり真っ直ぐに向かって歩いてきて、目の前で足を止めた。
「たっちゃん、どうして──?」
「アンタのこと、待ってたの」
「え……」
「って言っても、ここじゃなんだから、ちょっと、今から顔貸してくれる。そこの駅近くの公園に、移動しよう」
そうして言われるがまま、俺はたっちゃんと二人で近くの公園に向かった。
その間、俺達に一切の会話はない。
……どうして、たっちゃんはわざわざ俺を待っていたんだろう。
少なくともミオに関することだということだけは想像がつくけれど、だとしたら一体どんなことなんだろう。



