ミオにとってナルの存在は、トラウマのようなものだろう。
そんなナルと友達の俺に対しても、ミオは不信感を抱いたに違いない。
……ほんとに、どうするべきなんだろう。
ミオとナル、俺はどちらも大切だった。
俺がミオを選べば、もう二度とナルとは友達には戻れないかもしれない。
逆を言えば、俺がナルとの友情を取ると、ミオとはもう二度と繋がりを持てないかもしれないと言うことで……。
「あー……っ、クソ……っ!」
思わずクシャリと髪に指を通した。
ミオを傷つけたナルのことは、決して許してはいけないと思うけれど……。
それでも俺にとってナルはかけがえのない大切な友達だから、どちらか片方を取るという選択を決断することは難しかった。
見上げた空には相変わらず灰色の雲がかかっている。
それはまるで、今の自分の心模様を写しているようだった。
✽ ✽ ✽
「……ハァ」
今日は一日中、溜め息ばかりついていた。
結局、答えを見つけることのできなかった俺は一人、放課後の教室をあとにした。
教室を出る間際、癖でぐるりと中を見渡したけれどナルの姿は見当たらなかった。
多分、もう帰ったのだろう。
これまでなら二人で色々話してから帰ることが常だったのに、そんなことすら今の俺達には許されない。



