「この本以外にも、探すと色々ありますよ」
「え、と……」
けれど私の言葉に戸惑いを見せた彼は、返事に困っているように見えた。
……どうしたんだろう。
名前を教えてくれって言うから、本の著者名を教えたのに。
まだ何か、他にも聞きたいことがあるのかな?
「あ……そ、あ……な、なるほど」
「……?」
「そ、それ、小春さんって人が書いた本なんだね。そ、そっか……なるほど」
「…………?」
ハテナ、だ。
続けて「うーん」と悩ましい声を出した彼は、続く言葉を必死に探している。
「あの……」
「ちょ、ちょっと待って! え、と……。あ……っ、そ、そうだ! そしたらその本のこと、もっと色々教えてくれない?」
「え……」
今度は、よく意味がわからなかった。
けれどそう言う彼があまりにも真剣だから──。
なんとなく、そのお願いを無碍(むげ)にしてはいけないような気がしたんだ。



