『そんなお前に、相談なんてした俺もバカだった。恋も知らないお前に、俺の気持ちなんてわかるわけがない』
──恋も知らない、私に。
『もう二度と、俺は女の言う言葉なんて信じない。女なんて……自分勝手な奴ばっかりだ』
吐き捨てるように言ったトウヤくんは、誰より自分自身が一番傷ついた表情をしていた。
もし、私があのとき、安易に応援の言葉なんてかけなければ、トウヤくんがあんなふうに傷つくこともなかったのかもしれない。
そう思ったら、去っていく彼を呼び止めることもできなくて、ただ遠くなるトウヤくんの背中を──私は、ただ呆然と見つめていることしかできなかったんだ。
「あ……っ」
どれだけ、その場で泣いていただろう。
ふと、鞄の中に入れてある携帯電話が震えていることに気がついた私は、落としていた視線を上げた。
気がつくと、空は黒い雲に覆われている。
画面をタップしてメッセージを開くとお姉ちゃんからのメッセージが届いていて、思わずビクリと心臓が飛び跳ねた。
【学園祭、楽しんでる?】
届いたのは、そんな何気ない質問だった。
けれど、とても返事をする気にはなれなくて、私は携帯電話をギュッと握り締めた。



