『ふざけんなよ……』
『トウヤ、くん……?』
『友達なんて……そんなの俺は、一度も望んだことはない』
冷たい声。初めて聞くその声は私の身体を強張らせるのには十分で、返す言葉を失った。
『……俺はこれまで愛美さんのことを、友達だなんて思ったことは一度もなかった。俺は……俺は本気で、愛美さんのことが好きだった』
『……っ、』
『そういう俺の気持ちなんて、シラサカは何もわかっていないくせに。何が、また素敵な恋ができるだよ。何が……これからも友達としてよろしくだよ、ふざけんな! 俺は好きな人と友達なんかに、絶対ならない!』
悲痛なトウヤくんの叫びは、バカな私の心の奥に突き刺さった。
ああ──私は、なんてことをトウヤくんにしてしまったんだろう。
励ますどころか、既に傷ついていたトウヤくんに、更に重ねて深い傷を負わせてしまったのだと、ここまで言われてようやく気がついたのだ。
『ト、トウヤくん、ごめんなさい、私──』
『……お前なんて、愛美さんのオマケのくせに』
『え……』
『バカだよな、ほんと。俺は愛美さんに近づくために、妹のお前に近づいただけなのに。最初から俺は、お前のことも友達だなんて思ったことは一度もなかった』
『──っ、』
鋭いナイフで、胸を抉られたみたいだった。
同時に、絶望が心を覆った。
……ああ、そっか。トウヤくんも、同じだったんだ。
他の人たちと同じように、私を通してお姉ちゃんを見てたんだ。
ううん……最初から、お姉ちゃんしか見てなかったのかもしれない。
私ではなく、私がお姉ちゃんの妹だから……近づいてきた、だけだった。



