『で、でも、お姉ちゃん、トウヤくんのこと、カッコイイし面白い子だって……!』
『うん。でも、だからって、好きになるとは限らないし? 申し訳ないんだけど、これからも友達としてよろしくねって私が言ってたって、美織からもトウヤくんに伝えておいてくれるかな?』
お姉ちゃんに、悪気なんてなかった。
これまでだって色んな人に告白されてきたお姉ちゃんからすれば、あくまでトウヤくんもその中の一人に過ぎなかったというだけだ。
だけど──トウヤくんは、そうじゃない。
たった一人の想い人であるお姉ちゃんに告白して、フラレたんだ。
まだ本当の恋も知らない私には、その痛みがどれほどのものかもわからなかった。
けれど、このときはとにかく早く、トウヤくんと会って話をしたいと思ったんだ。
『トウヤくん……っ!』
だから、次の日の放課後、私は帰ろうとするトウヤくんを捕まえて声をかけた。
『……何?』
『き、昨日、お姉ちゃんから聞いたの……っ。お姉ちゃん、トウヤくんのことは友達だと思ってるから、これからも友達としてよろしくって……』
私も、悪気なんてなかった。
むしろ、どうにかしてトウヤくんを励まそうと思って必死だった。
『そ、それにトウヤくんはカッコいいし、またいつでも素敵な恋ができるはずだから、きっと大丈夫──』
実際、これでお姉ちゃんと話すことも会うこともなくなるより、友達としてお姉ちゃんのそばにいられるほうが、トウヤくんにとっては幸せなんじゃないかとすら思っていた。
そしてトウヤくんみたいに素敵な人なら、きっとまたすぐに素敵な恋ができるだろうなんて思っていた。
『だから、だから……』
『……ハッ、友達?』
だけど、違った。
そういう私の考えは全部、浅はかで、思慮不足なただの余計なお世話だったんだ。



