俺の「好き」は、キミ限定。



「あの……?」

「……っ、あ! ご、ごめんなさい!」


どれくらい、彼を見つめていたのだろう。

我に返った私は瞬きを繰り返したあとで、慌てて彼から目を逸らした。

ど、どうしよう。

初対面なのに凝視して、変な奴だと思われたかもしれない。

だけどまさか、この本を彼が届けてくれるだなんて思ってもみなかった。

彼が着ている制服は駅向こうにある男子校の制服で、わざわざこれを渡すためだけに、ここで待っていてくれたのだということは鈍くさい私でもわかる。


「この本……」

「わ……っ、わざわざ、ありがとうございます!」


だから、そこまでわかっていながらその本を受け取らないという選択はできなかった。

震える手を精一杯伸ばして彼から本を受け取ると、私は表紙を隠すようにギュッと胸元に引き寄せた。

──恥ずかしい。

穴があったら、今すぐ掘ってでも入りたい。