「昔、友達だと思ってた男に、すごく傷つく言葉を言われたことがあるみたいなんだ」

「まさか、それで男不信……ってわけじゃないよな。だって、現に今は男の親友がいるみたいだし、ユウリとだって普通に接してるんだし」

「……うん、多分そういう感じではないと思うんだけど。でもミオは、過去に、その男に言われた言葉をすごく気にしてるふうだった」

「……へぇ」


珍しくナルが、女の子のことで考え込む素振りを見せた。

でも……そう思うとミオにとって、その過去の男は特別な存在だったんじゃないか?とも感じてしまう。

ミオのお姉さん目当てに近づいてきてたことだって、ミオは実はその男のことが好きで、そういう相手に『お前なんてお姉さんのオマケだ』と言われたからショックで、未だに気にしている……ってことも、あり得なくはない気がする。


「……まぁでも、その男に、ミオちゃんが過去に何を言われたのか、俺にはわからないけどさ」

「……うん」

「たとえ、過去にそいつに傷つけられたことがあったとしても、そんな奴のことはお前が忘れさせてやればいいじゃん」


さも、当然のことのように言ったナルは、自分が今どれだけ男前なことを言ったのかも自覚はないんだろう。

だけど確かに、ナルの言う通りだった。

過去に何があったって、俺が全部忘れさせてあげたらいい。

何があっても俺はミオのことを傷つけたりしないから、それをきちんと伝えていけばいいだけの話だ。