「う、うん。今、帰ってきたところ。お姉ちゃんは、これから出掛けるの?」

「うん。そう、ちょっと友達とねぇ。あ……ねぇ、その服、もしかしてこの間の服?」

「え……あ、うん」


尋ねられて曖昧に頷くと、お姉ちゃんはフワリと花が開くように微笑んだ。


「可愛い〜。あのとき、みんなは私に似合うって言ってたけど、私は美織のほうが似合うと思ってたの」


お姉ちゃんは、多分心からそう思って言ってくれているのだろう。

お姉ちゃんは、いつでも私に優しいんだ。

ああ、やっぱり……天使みたい。

背中には真っ白な羽根が生えていて、誰が見たって可愛くて、綺麗で……守りたくなるような、女の子。

『お前に、俺の気持ちがわかるのかよ。恋もしたことのないお前に、何がわかるっていうんだよ』

耳の奥で鳴り響く声に、ズキリと胸が締め付けられた。

お姉ちゃんに恋をしていたあの男の子も、こんなに可愛いお姉ちゃんだからこそ、恋い焦がれていたんだろう。


「それじゃあ、いってきま〜す」

「あ……いってらっしゃい……!」


鈴のなるような声を残して、お姉ちゃんが歩いていく。

その背中を見送りながら、私はそっと自分の胸に手を当てて……落ち着かせるように、息を吐いた。