「ミオと初めて手を繋ぐ男が俺だって知って嬉しくて……。ごめん。今はあんま、こっち見ないで」
慌ててパッと顔を逸したけれど、多分、ミオには赤くなった頬も耳も見られてしまっているだろう。
ただ、好きな子の初めて手を繋ぐ相手になれたってだけだ。
たったそれだけのことなのに、こんなに幸せな気持ちになるなんて、知らなかった。
「とりあえず、帰ろう、か?」
とにかく早く歩き出さないと、またミオのことを抱き締めたくなりそうで……。
もう二回もやらかしてるし、さすがに三回目は、次に毒舌たっちゃんに会う機会があったら、調子に乗るなと怒られそうだ。
「う、うん……」
ミオが頷いたのを確認したあと、結局、ミオの顔を見られないまま前を向いて歩き出した。
昨日、自転車でミオを家まで送ってよかった。
家までの道を聞かなくても済むし、今、振り向かないでいられるから。
「確かこっちで、あってるよね?」
「うん、その曲がり角を曲がると、公園が見えてくるから……」
そのまま改札を抜けて、商店街を通ってしばらく道なりに歩いた。
その間、お互いの顔を見ることはできなかったけれど、ぽつりぽつりと色々な話をした。



