『白坂(しらさか)美織って、お姉さんと全然似てないよな!』
『お姉さんは、あんなに可愛くて天使みたいな子なのに!』
──脳裏を過ぎるのは、もう何度聞いたかもわからない、誰かの言葉だ。
完全無欠なお姉ちゃんと比べられるたび、私は何度も自分の平凡さに嫌気が差した。
だけど何度嫌な思いをしたところで、私は他の誰にもなれないし、誰かの代わりにもなれないのだ。
そうしていくうちに、私は私にしかできない恋をしてみたいと思うようになった。
本の中の主人公や、周りの友達たちがしているのは、そんな、キラキラした恋だった。
……私だけを見てくれる、たったひとりと、一生に一度の恋をしてみたい。
「ハァ……どこかにそんな恋、落ちてないかな」
なんて、それは私には贅沢な願いかもしれないけれど。
それでも憧れるのは自由だから、私はいつでも憧れる。
「そんな都合よく、物事は進まないよ」
トン、と額を小突かれて、再び唇を尖らせた。
空は、快晴。
今日も私は恋に恋する乙女のままで、青い空を眩しく思いながら静かに見上げた。



